オバマ大統領は2010年4月15日、アメリカ航空宇宙局(NASA)ケネディ宇宙センターで演説し、2030年代半ばまでに人類を火星の周回軌道に送り込み、さらに火星への着陸をめざす壮大な目標を掲げた新宇宙戦略を発表した。オバマ大統領はブッシュ前政権が進めていた有人月探査計画を打ち切ったが、宇宙開発能力の低下や雇用喪失を懸念する声が高まり、それに代わる大胆な構想を打ち出した。有人宇宙探査計画では、(1)新型打ち上げロケットの研究に30億ドル以上を投入し、15年までに設計を完了、建造を開始する、(2)25年までに月より遠くへの有人宇宙飛行を開始できるようにするため、長距離飛行の可能な宇宙船を開発、火星と地球の間に横たわる小惑星帯に宇宙飛行士を送り始める、(3)30年代半ばまでに月より約200倍遠い火星の周回軌道に人類を送り、地球への帰還を果たし、続いて火星着陸を実現する。NASAは13年6月、火星有人探査をめざす次世代宇宙飛行士の候補8人を発表。14年12月には火星探査用有人宇宙船「オリオン」の無人試験飛行に成功、21年に有人飛行に挑む。並行して次世代有人大型ロケット「SLS」(Space Launch System ; 宇宙打ち上げシステム)も17年に無人で打ち上げをめざし開発が進められている。