アメリカ南部ルイジアナ州の沖合約80キロの、メキシコ湾の海底油田から原油を掘削するイギリス石油大手BPの海上施設で、2010年4月20日、爆発事故が発生し、作業員11人が死亡した。この事故で深さ4.8キロにある地層から原油をくみ出すためのパイプが破損し、水深1.5キロの海底から大量の原油が流出した。アメリカ地質調査所は5月27日、原油流出量がアメリカ史上最悪規模と発表した。野党・共和党から初動の出遅れを批判されたオバマ大統領は6月15日、就任後初めて大統領執務室から国民向けにテレビ演説を行い「原油流出に対する戦いに全力を尽くす」と表明した。しかし、原油を封じ込める作業は難航し、BPは3カ月後の7月15日に油井上部に密閉性の高い「ふた」を設置し原油の流出を止めたと発表、アメリカ政府は9月19日、油井を封鎖したと発表した。封鎖完了までに事故発生から約5カ月間もかかった。流出した原油量について、アメリカ政府から委託を受けた科学者チームは、約490万バレル(約7億8000万リットル)と試算しているが、メキシコ湾を漂流して漁業や観光業に大打撃を与えた。オバマ大統領によって10年5月に設置され、事故の再発防止策を検討していた大統領委員会は11年1月11日、原油流出の原因について「特定できる過失に由来する」として事故は防止できたと指摘し、海底油田開発の規制強化や、安全監視のための独立機関の設置などを提言する最終報告書を発表した。委員会はBPと主要な請負業者であるハリバートンなどによる組織的な危機管理の失敗が事故を引き起こしたと指摘した。