カナダのバンクーバー市に2003年9月に開設された、麻薬注射を行うことができる公的施設。麻薬を注射する際、消毒などをしていない注射針からエイズに感染する可能性が高いため、安全な注射針を提供するという試み。貧困層やエイズ患者が多く、また犯罪や麻薬事件が多発するイーストサイドと呼ばれる地域の問題を解決するため、州の医療サービスを提供する公的機関(Vancouver Coastal Health Authority)と民間NGOが協力して開設した。医師や看護師も駐在し、健康・医療問題についてのアドバイスや治療なども行う。また麻薬患者がホームレスにならないように、アパートを提供するなどのサービスもある。インサイトでは麻薬を販売していないため、施設を利用するユーザーが持参することが原則である。またエイズなどに感染しないことだけが目的ではなく、麻薬の過剰摂取による死亡を予防し、地域の治安を改善する、という意義も指摘されている。麻薬の所持などを管理する連邦法に抵触する可能性もあったため、ブリティッシュ・コロンビア州と連邦政府が協議し、一時的に連邦法を適用しない、という例外規定が認められた。当初は3年間限定であったが、その後免除の期間が小刻みに延長され、最終的には2011年9月、連邦最高裁にてこの試みを続けることが認められた。こうした試みは、1986年にスイスで始まり、ドイツやオランダなどでも行われている。