近年のカナダの総選挙では、2004年、06年、08年と3回連続して単独政党だけでは下院議席の過半数を占められないという状況が続いた。11年5月の総選挙は、そうした「不安定な安定」にピリオドを打つ、という歴史に残る結果となった。大きな変化として、まず第1に、保守党が308議席のうち166議席を獲得し、単独で過半数を占める安定政権となった。ただし、これまでと同じようにケベック州において議席を多数獲得するという課題は残されたままであった(75議席のうち5議席獲得)。第2に、保守党と長年のライバルであった自由党が後退し、わずか34議席にとどまったこと。自由党が政権与党に反対したり、逆に支持する時もあり、その基準が不透明だったためと言える。そして第3に、自由党に代わり新民主党が野党サイドでは最大勢力になった。新民主党は、全体で102議席となり、特にこれまで不得意であったケベックにおいては、75議席のうち59議席(08年総選挙では1議席)も獲得した。他方、ケベックのナショナリズムを代弁する政党として1993年から登場してきたケベック連合は、前回の49議席からわずか4議席に転落した。