アメリカ政府は、国家への悪質なサイバー攻撃を「戦争行為とみなす」厳しい方針を定めている。2008年に大統領府に「サイバーセキュリティー調整官」を設置し、10年5月には、メリーランド州のフォートミード陸軍基地にサイバー司令部を創設した。国防総省が11年7月14日に初めて公表した「サイバー戦略」は、中国や北朝鮮を念頭に置いたもので、サイバー攻撃による被害の深刻さに応じた報復に言及し、武力攻撃の可能性も排除していない。サイバー戦略では、サイバー空間を陸海空・宇宙と並ぶ「第5の戦域」と規定、破滅的なダメージを企図した敵の攻撃を、コンピューターウイルスなどを使ったサイバー兵器で粉砕することを最大の目的としている。アメリカ国防総省が13年5月に公表した中国の軍事力に関する報告書は「12年にアメリカを含む各国のコンピューターシステムは中国からのものとみられる侵入を受け続けた」と指摘。連邦大陪審は14年5月、サイバー攻撃でアメリカ企業にスパイ攻撃を行ったとして中国人民解放軍のサイバー攻撃部隊の将校5人を起訴した。同年12月には、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)第一書記の暗殺を題材にしたコメディー映画を製作したアメリカのソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)への北朝鮮によるサイバー攻撃が発覚し、オバマ大統領は15年1月2日、対抗措置として北朝鮮に対する制裁を求める大統領令に署名した。アメリカ企業へのサイバー攻撃に関連した制裁は初めて。