オバマ政権は2011年9月20日、自らが同性愛者であることを公言して軍務に就くことを禁じた「同性愛公言禁止規定撤廃法」を施行した。就任前から禁止規定の撤廃を公約していたオバマ大統領は、規定撤廃を「自己犠牲の精神や勇敢さ、高潔さは性的志向によって区別されるべきものではない。歴史的な一歩だ」と述べた。米軍には、1993年に導入された「Don’t ask, don’t tell (尋ねず、語らず)」というルールがあり、同性愛を公言する兵士は風紀を乱すとの理由で除隊対象となるため、軍隊内では性的志向を尋ねず、同性愛者は沈黙を保つべきだとされてきた。同性愛者であるかどうかを問わないことで入隊を認めるというルールなのだが、実際には同性愛者であることが判明すれば除隊を求められる差別規定とされてきた。人権保護団体によると、93年以降、1万4000人以上が同性愛者という理由で除隊を余儀なくされた。オバマ大統領は、2010年1月に行った一般教書演説で規定撤廃に向けて具体策をまとめる方針を示し、禁止規定撤廃法案は上下両院で可決され、同年12月にオバマ大統領が署名し成立した。ワシントン・ポスト紙によると、1993年の世論調査で同性愛者が軍務に就くことへの支持は44%だったが、2010年には77%に達し、規定撤廃はアメリカ社会の意識の変化を反映している。11年12月には、艦艇が任務を終えて帰還した港で行われる米海軍伝統の儀式「ファースト・キス(First Kiss)」が、海軍史上初めて同性愛者の女性カップルの間で交わされた。