アメリカ大統領選挙は、選挙戦が10カ月におよぶ長丁場のうえ、広い国土を遊説するため莫大な資金がかかる。選挙事務所と党組織、政治行動委員会(PAC ; Political Action Committee)が資金集めをする。PACは政治資金の受け皿となる資金管理団体だが、資金調達額に上限があるのに対し、スーパーPAC(特別政治行動委員会)は個人や業界団体、労働組合などから無制限に献金を集めることができ、PACとは異なり献金者名を明らかにする法的義務はない。献金には税制上の優遇措置があり、富裕層が積極的に献金を行う誘因となっている。スーパーPACは、連邦最高裁判所が2010年1月に下した判断を受けて設立が認められた。連邦最高裁判所の判断は、特定候補者への投票を呼びかける「選挙活動」と、業界団体などが主義、主張を表明する「政治活動」は区別されるべきだとしている。このためスーパーPACは、特定候補への投票の呼びかけといった直接的な選挙活動はできないが、政策に関する主張や相手候補への批判は認められており、集められた資金の大半はテレビCMを通じて相手候補を誹謗(ひぼう)・中傷するネガティブ・キャンペーンに投入される。スーパーPACが導入された12年大統領選でオバマ、ロムニー両陣営が演じたネガティブ・キャンペーンは史上最悪の泥仕合と評された。