アメリカで制作されたイスラム教の預言者ムハンマドを描いた映像に端を発する抗議行動が中東などイスラム圏で広がった。インターネット上で公開された映像はムハンマドを不道徳な人物として侮辱的に描いていたため、イスラム教徒が激高、2012年9月11日、リビアのベンガジのアメリカ領事館が武装集団に襲われ、駐リビア大使ら4人が殺害された。イスラム教の金曜礼拝が行われた同14日、抗議デモは中東からアジアに波及し、インドネシア、マレーシア、アフガニスタン、バングラデシュを含む20カ国・地域に拡大した。抗議行動が一気に拡大した背景には、独裁政権が相次いで崩壊した11年の「アラブの春」を経験した国々では過激派の台頭を抑えきれないことが指摘された。イスラム圏反米デモに対しオバマ大統領は「アメリカはあらゆる宗教に敬意を払い、他宗教に対する侮辱を許さない」と述べた。一方、アメリカ大使殺害に対しては潘基文国連事務総長が非難声明を出すなど、国際社会から強い批判の声が上がった。カーニー大統領報道官は12年9月20日、ベンガジのアメリカ領事館襲撃事件について「テロ攻撃」との認識を示した。オバマ大統領は同25日、国連総会の一般演説で「リビアでの攻撃はアメリカへの攻撃だ」と非難、イスラム圏反米デモについては「無実の人々の殺害を正当化できるものはない」と批判した。これに対しイスラム諸国は、アメリカが表現の自由を理由に映像を野放しにしていることを批判した。