カナダの州政府はアメリカの州政府と異なり、議院内閣制度が採用されている。これは州議会で多数派を握る政党から行政府の代表(州首相)を選ぶ、という方式である。これにより、政権担当者(政党と州首相)は議会の支持を得ることが可能であり、強いリーダーシップを発揮することができる。カナダは、議院内閣制のため任期が固定されておらず、州首相の意向により議会の解散などを左右できる。加えて、カナダ憲法の規定から州政府が管轄する領域は広く、教育や福祉や医療、そして経済政策など市民生活に関係することになる。その結果、連邦政府は外交や国防といった限られた政策領域で権限を発揮することになる。カナダの国民から見れば、連邦政府よりも州政府の方が身近な行政サービスを提供してくれる存在である。またカナダの州は単なる行政上の単位にとどまらず、それが独自な政治的単位や経済的な単位、そして文化的な単位でもある。連邦制度の枠内に限られるが、ケベックの分離主義やナショナリズムと同じように、他の州も強い発言力を持っている。ただし、強い州政府は、期待と権限が大きい分、ミスをすれば州民の失望も大きくなる。そのため、州政府では劇的な政権交代が起こりやすい。