1960年代に公民権運動が高まる中で、アフリカ系アメリカ人 (黒人)の参政権拡大を目的に65年に制定されたアメリカの法律。アメリカでは、選挙で投票するために有権者登録が必要となる。投票権法の制定以前は、南部を中心に、有権者登録の際に識字テストなどを課すことで、黒人の有権者登録を妨害し、実質的に黒人の選挙権を剥奪していた。このため同法では、黒人の有権者登録割合が特に少ない南部諸州を対象に、有権者登録の管轄を州・地方政府から連邦政府へ移管した。また、選挙の実施方法を変更する前に連邦政府の許可を必要とする規定を盛り込んだ。その結果、黒人の所有率が低い写真付き身分証の提示義務づけなど、人種差別的とされる選挙制度の変更が阻止されてきた。しかし、連邦最高裁判所は2013年6月25日、対象となる州の指定方法について人種問題の改善など現状を反映していないとして違憲の判断を下した。最高裁は、南部の諸州でも黒人有権者が白人と同等の割合に達し、黒人候補者も多数当選しているなど、状況が変わったとしている。評決は5対4で、保守派の5判事が違憲を支持した。これによりマーチン・ルーサー・キング牧師らが主導した公民権運動の大きな成果の一つが無効となった。オバマ大統領は「深く失望している。判決は後退だが、投票差別をなくすための我々の努力の終わりを表すものではない」とコメントした。