カナダには先住民という独自の集団が定住している。かれらは数千年前にベーリング海峡(約80キロ)を渡り、アジア大陸から北米大陸へ移住したと考えられている。大きく区分するとファースト・ネーションズ(カナダ・インディアン)、イヌイット、メティ(メティス)という三つの集団に分かれる。ファースト・ネーションズはバファローなどを追い求めたり、漁業などで生活したりと経済活動は地域ごとに異なる。また同じファースト・ネーションズでも言語や文化も地域により異なる。カナダ政府(イギリス政府も含む)とは白人の入植や西部開拓に伴い、インディアン条約を結び、伝統的な居住地域を放棄し、土地を明け渡してきた。ファースト・ネーションズたちは土地の立ち退きをするが、政府の保護のもとで暮らすことが可能であった。カナダでは毛皮交易を白人とファースト・ネーションズの間で行い、友好的な関係が維持されることもあった。特に西部カナダでは男性の白人交易者と女性のファースト・ネーションズが結婚することもあり、その子供や子孫はメティと呼ばれてきた。西部開拓史においてカナダではメティの自治権を要求し、政府と対立するような事件も19世紀末に起こっている。イヌイットはかつてエスキモーと呼ばれており、寒冷な北極圏に定住し、狩りや捕鯨などを行い生活していた。