大統領が連邦政府や軍に命令できる強力な権限で、法律と同じ効力がある。連邦議会との力関係から大統領が取り組みたい法案の成立が難しい場合などに発令される。オバマ大統領は、2期目に入って野党・共和党が上下両院の過半数を制しているため、移民制度改革などで議会の承認を経ないで政策を遂行する大統領令に依拠する姿勢を打ち出した。大統領令は1789年に始まった。フランクリン・ルーズベルト大統領が発令した1942年2月19日付大統領令は、軍が国防上の必要があると認めた場合には、裁判や事情聴取を経ないで住民を強制移住させる権限を認めたもので、第二次世界大戦中に約12万の日系人を強制収容する根拠となった。ジョージ・W・ブッシュ大統領は9.11同時多発テロを受けて、テロ組織の在米資産を凍結する大統領令(2001年9月23日付)をはじめ大統領令を連発した。ただ、大統領が憲法や法律の目的から逸脱し、議会の反対を押し切って発令すれば、議会は反対する法律を作ることで対抗できる。連邦最高裁判所が違憲判断を出すこともある。朝鮮戦争時の1952年にトルーマン大統領は、ストライキ中のオハイオ州の製鉄所を国有化する大統領令を発令したが、連邦最高裁が違憲と判断したため断念した。