オバマ政権は、シリアとイラクで勢力を拡大する過激派組織「イスラム国」(IS)と戦うイラク軍やクルド人部隊を支援するため2014年6月に軍事顧問300人を派遣して以来、軍事介入の度を強めている。同年8月イラクで始めた空爆もシリアに拡大、同年11月には米軍1500人のイラクへの追加派遣を決めた。シリア領内の「イスラム国」に対する軍事作戦には、サウジアラビア、ヨルダンなどの中東5カ国も加わった。米軍戦闘部隊を派遣しない代わりに、外交や諜報、軍事、経済などのあらゆる手段を使って「イスラム国」を弱体化させ、最終的に壊滅させるというのがアメリカの戦略だ。オバマ大統領は15年1月20日に行った一般教書演説で、軍事力を含むアメリカのリーダーシップが「イスラム国」の前進に歯止めをかけているとの認識を示し、議会の承認を得て「イスラム国」への軍事力行使を本格化させる方針を表明した。その一方で、イラクとアフガニスタンでの戦争から学んだ教訓から「イスラム国」に対しては大規模な地上部隊を投入しない考えを改めて強調した。しかし、アメリカの軍事専門家の多くは、空爆で「イスラム国」の勢力拡大を食い止めることができても、組織を壊滅させるのは不可能だとみている。