カナダにおける難民の受け入れ体制は、基本的に移民の受け入れ体制とリンクしている。具体的には毎年、移民と難民の受け入れ目標数を定め、州政府や民間支援団体なとど協力しつつ、スムーズな受け入れ体制を構築してきた。2015年度計画については受け入れ数の下限は26万人、上限は28万5000人とし、ここに経済移民、経済移民の家族、そして難民という3つのカテゴリーが設けられている。15年度の実績として、全体の合計では27万1845人を受け入れており、そのうち難民の合計数は3万5922人となった。シリア難民の積極的受け入れを公約として15年11月に誕生した自由党のジャスティン・トルドー政権は、15年11月から17年1月末までに約4万人のシリア難民を受け入れた。カナダは難民の受け入れにあたり、これまでも積極的な貢献をしており、1986年には国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が難民支援に尽力する人に贈るナンセン・メダル(ナンセン難民賞)がカナダ国民に授与されている。
カナダに難民として受け入れられるルートは二つある。一つは迫害などにより、出身国を離れて難民キャンプなどで国際機関などの保護の下で一時的に定住している難民たちが対象となる。カナダ政府の担当者たちがこうした難民に聞き取り調査をして、受け入れが可能かどうか判断し、一定数の難民を受け入れることになる。他方、出身国を離れ、航空機や船舶などでカナダへ入国し、保護を求める(避難民 asylum-seekers)方法がある。この場合、移民・難民審判所(Immigration and Refugee Board of Canada)という連邦政府の行政機関が審査を行い、受け入れが可能かどうか(時間がかかるが)判断が行われる。難民受け入れの主体は基本的に連邦政府の担当官庁(移民・難民・市民権省)であるが、民間団体や個人ベース(5人を単位とする)が費用負担を行うという条件で受け入れ主体となることが可能である。最近では連邦政府と民間団体が受け入れ費用を折半する(半年分の費用)という新しい手法も導入されている。
難民としてカナダへ受け入れられると、1年間の生活支援や健康保険などが保障され、また語学の習得訓練を受けることができる。ただし、受け入れた難民が就業して自立するための語学訓練の機会が十分ではない。そのため、自立できない場合には公的な扶助に依存する可能性もあり、より積極的な支援政策が望まれている。