2015年10月19日、連邦総選挙が行われ、43歳という若いジャスティン・トルドーが率いる自由党がスティーブン・ハーパーの保守党を破り、政権の座に復帰した。ジャスティン・トルドーはかつて1982年の連邦憲法の制定に努め、ケベックの分離主義に対抗したピエール・エリオット・トルドー元首相の息子であり、カナダ政治の刷新を掲げて登場した。この選挙は新人が多く当選するというユニークなもので、当選議員(338人)のうち6割近く(197人)を新人が占めるという大きな政治変動も呼び起こした。15年11月に発足したトルドー政権では30人の閣僚のうち、男女同数(15人ずつ)という新しい試みを行った。さらに初当選かつ初入閣が多い。また重要ポストには先住民(インディアン)の女性弁護士が法務大臣に任命され、またシーク教徒でアフガニスタンでも軍務を務めた男性が国防大臣に任命されている。選挙制度の改革などを検討する閣僚ポスト(民主機構担当大臣)にはアフガニスタン難民でもあった30歳の女性が任命された。他方、外務大臣や公安・非常時対応準備大臣といった重要なポストにはベテランの男性議員が任命されている。トルドー内閣では基本的に女性議員の積極的な登用と併せて世代交代を進め、若手世代を軸とすることで自由党の統治スタイルを変革させる狙いがある。前任のハーパー政権では、首相のリーダーシップを強調するあまり、情報がコントロールされ、閣僚に発言権がないという批判が強かった。そのため、トルドー政権では、情報をよりオープンにし、かつマスメディアとの関係も友好的になるようにした。政策的にはミドル・クラスの人々の権利や利害を尊重し、また先住民との関係改善を目指し、多様性を尊重するという目標などが提示されている。