原油価格の高騰によって余分に得られた国庫収入をすべて費消してしまうのではなく、その一部を原油価格の国際的な変動に備えておこうとする目的の基金。原油価格がロシア政府によって想定された基準価格(1バレル当たり、かつては27ドル、現在は約70ドル)を超える場合、天然資源の採掘税と輸出関税の一部を安定化基金の財源として蓄える。同基金は当初、対外債務の繰り上げ返済を主目的としていたが、2006年夏、パリクラブ(主要債権国会議)への債務は完済された。以後は、主として「優先的国家プロジェクト」と称する保健、教育、住宅建設、農業の4部門にも用いられる。同基金には、08年1月31日現在、約1570億ドルのオイルマネーが注ぎ込まれていた。ロシア財務省は、08年2月1日、同基金を政府系ファンド「国民福祉基金」(約320億ドル)と予備費の「準備基金」(約1250億ドル)に分割すると発表した。08年秋以降ロシアを直撃した経済危機のために、安定化基金の元となる外貨準備高は約3分の1も減少したが、10年以降の景気回復とともに再び上昇しはじめた。