主としてカスピ海周辺に大量の石油が埋蔵されていることが分かったために、カスピ海沿岸諸国が石油の所有・運搬をめぐって繰り広げている争い。欧米諸国も加わっての熾烈(しれつ)な石油争奪戦は、19世紀のロシア-イギリス間の「グレート・ゲーム」になぞらえて、「第2次グレート・ゲーム」とも呼ばれる。カスピ海からロシアを経ることなく、欧米向けに石油を運ぶためのパイプライン・ルートが、アメリカ主導で2002年9月に着工した。アゼルバイジャンの首都バクーから、グルジア(現・ジョージア)の首都トビリシを通り、トルコの地中海沿岸のジェイハンを結ぶ。これら三つの地名の頭文字をとってBTCラインと略称される。全長は1767キロ。05年秋に完成した。アゼルバイジャンに次ぐ石油大国のカザフスタンも、BTCラインに連結するパイプライン(テンギス油田-バクー間)の完成を目指す。これらのルートの建設は、一部CIS諸国による、経済的のみならず政治的なロシア離れ現象を加速する。のどから手が出るほどにエネルギーを欲する中国も、このゲームに加わっている。カザフスタン、トルクメニスタンなど中央アジア諸国との間で、これらの地域から直接、中国へ原油やガスを運ぶパイプラインの建設に精力を注ぎ、その一部は完成し、稼働している。