プーチン指導部がエネルギー一本やりの経済から産業構造を多角化する必要があると自覚し、唱道しているものの、実現が容易でない政策。プーチン政権の誕生とともに発生した国際原油高騰の追い風を受けて、ロシア経済は好調の波に乗ることができた。が、同政権の幹部は資源依存型経済が「オランダ病」にかかる危険に気づいた。「オランダ病」とは、突然大量の天然資源を発見したことはよいものの、その輸出に熱中するあまり、自国の経済改革を怠り、国際競争力を低下させる結果を招くことを指す。2006年ころから、プーチン政権の幹部たちは、製造業、IT産業などへの産業構造多様化の必要を叫びはじめた。声高なスローガンにもかかわらず、ロシア経済専門家ですらその転換に関しては悲観的な予想を述べる。第1に、ロシアにはこのような経済分野での伝統も経験も欠如しているので、それらの産業への育成や転換には時間がかかる。第2に、とりわけエネルギー部門で顕著なように、プーチン政権下での経済活動は国家管理が強化され過ぎているために、民間はやる気をなくし、大胆なイニシアチブやイノベーション能力を発揮しようとしない。第3に、日本を含む先進諸国からの技術、経営スキルの導入が必要不可欠であるにもかかわらず、プーチン政権がエネルギー資源分野で行ったことは、外国の投資家や企業を国外に締め出し、事実上彼らのロシア進出を阻害する態度だったこと。こうした理由から、ロシアでの産業構造の転換は容易ではないとみなされている。