2006年11月23日、アレクサンドル・リトビネンコが亡命先のロンドンで殺害された。リトビネンコはロシア連邦保安庁(FSB)の元職員。1999年のモスクワなどでの連続アパート爆発事件が、FSBによって仕掛けられた罠(わな)であると説く著書(邦訳「ロシア 闇の戦争」光文社)を出版、身の危険を感じてイギリスに亡命した。モスクワからロンドンを訪問してリトビネンコに面会したアンドレイ・ルゴボイとドミトリー・コフツンを、ロンドン警視庁は容疑者とみなした。毒殺に用いられたポロニウム210は、ロシアの国家機関の関与なしに入手も国外への持ち出しが不可能ということも、根拠の一つとなっている。が、ロシア側は2人の身柄引き渡しを拒否し、リトビネンコ暗殺の背後には新興財閥のボリス・ベレゾフスキーがいると主張、逆にベレゾフスキーの引き渡しをイギリス当局に求めた。この争いが契機となって、イギリスとロシアは相手国の外交官(4人)の追放合戦を行い、英ロ関係は一時どん底近くにまで落ち込んだ。