2007年8月初め、ロシアの深海探査船「ミール」は、北極海の海底調査を行い、海底にロシア国旗を立てた。冬季オリンピック誘致成功と並んで、ロシアの国威発揚に役立つとして、プーチン政権は必要以上のPR活動を行っている。たとえばプーチン大統領(当時)自身は、早速現場の調査船に直接電話をかけ、隊員たちを祝福した。が、カナダ、アメリカなどは、このことによってロシアが北極海周辺の領土・資源に対する所有権主張を強めるのではないか、との懸念を深めた。たとえばカナダ外相はコメントした。「今は15世紀ではない。世界中を回って己の国旗を立て、これは自分の領土であると叫ぶ時代ではない」。それに対して、ロシアのラブロフ外相は、巧みに応じた。「われわれは、ロシアの大陸棚が北極海にまで及んでいることを証明したに過ぎない」。プーチン、メドベージェフらのロシア政治指導者が北極地域を重視する主な理由は、地球の温暖化傾向によって海の氷が解けることにより、(1)北極の大陸棚に眠っている炭化水素資源の採掘が可能となり、(2)アジアとヨーロッパを結ぶ北方航路の利用期間が延長できるかもしれないことにある。