2008年夏ごろから顕著となった世界規模の金融危機がロシアにも上陸し、ロシア経済に深刻きわまる影響をおよぼしたこと。かつて1998年夏ロシアを襲った金融危機によって、エリツィン期のロシアは再起不能と思われるまでの経済苦境に直面した。が、その直後から発生した原油価格の国際的高騰によって、ロシア経済は不死鳥のごとき復活をとげた。この金融危機に比べると、2008年夏以来の危機は、ロシアに経済的な蓄えが若干あった点ではダメージは少なかったかもしれない。だが他方、肝心の原油価格が08年7月ピーク時の1バレル当たり147ドルから30ドル台へと急落したことにかんがみ、より深刻だったともいえる。現行のロシア国家予算は、1バレル当たり70ドルを想定価格として組み立てられているため、国庫は持ち出しを覚悟せねばならなかった。かつて6000億ドルに届きそうであった外貨・金準備高も一挙に減少しはじめ、09年12月には約4000億ドルと約3分の2となった。10年10月時点で5000億ドルまで回復したが、12年現在のロシアはヨーロッパ債務危機の余波におびえている。