ドミトリー・メドベージェフ大統領が2008年7月に発表したロシア外交ドクトリン(新版)。ちょうど8年前の00年7月にプーチン前大統領が公表した、旧「ロシア連邦の外交政策概念」(旧版)の改訂版である。丸8年間にロシアを取り巻く内外環境は大きく変化し、ロシア外交を担当する大統領自身も変わったので、新版が発表されることは当然のなりゆきであった。しかし旧版と新版との間には三つの共通点と一つの相違点がある。第1に、両版とも、一体誰によって準備され、どのような場で検討されたのか、不透明であること。第2に、どうやらともにプーチンまたは彼の意を受けた側近によって執筆されたものであること。第3に、全5章の構成方式とすべての章のタイトルが新・旧版においてまったく同一であること。逆に最大の相違点は、新版に次の一文が挿入されていること。「ロシア連邦政府は、ロシアの外交政策の実現を担当する」。これは、たとえ憲法上ロシア外交政策の決定権が大統領に与えられていようとも、ロシア外交の実践は「ロシア政府の長」であるプーチン首相が握っているという意味にほかならない。