メドベージェフ大統領がヨーロッパ諸国に向けて提案している安全保障条約。冷戦終了後、ワルシャワ条約機構は解体した。他方、北大西洋条約機構(NATO)は解体していないどころか、東方拡大をとげている。ロシアは、このことに当然不満を抱いている。ロシアが参加している欧州安全保障協力会議(OSCE)も、近年、ロシアの民主化移行を監視することに熱心になり、ロシアにとり満足しうる組織ではなくなった。メドベージェフ大統領は、ヨーロッパにおける新しい安保の枠組みとして、NATO、欧州連合(EU)、OSCE、CIS集団安全保障条約機構(CSTO)をすべて包含する一大組織の結成を呼びかけた。具体的には、同大統領は2009年11月29日、「欧州の安全保障に関する新条約」草案(計14条)を発表した。だが、ロシアは旧ソ連時代からおよそ実現不可能な集団安保スキームを提唱する傾向があり、今度の構想も、ヨーロッパとアメリカとの間にくさびを打ち込むこと、PRの狙いが主目的であろう。このような疑いが提起されており、実現の見通しは容易に立ちそうにない。