かつて「割れ鍋にとじ蓋(ぶた)」、または「経済的相互依存」関係にあるといわれたロシアと中国との間の商業的、貿易上の関係がきしみはじめた状態を指す。一つの理由は、中ロ両国がともに後進的な経済段階を経過して、欧米や日本などの先進資本主義国を貿易パートナーとして選択するようになったことにある。とりわけ、ロシア側の不満は大きい。ロシアから中国への輸出が原油や木材などの資源や原材料にかたよっているのに対して、中国からロシアへの輸出は工業加工製品というアンバランスが生じている。2008年11月、中ロ両国は東シベリア-太平洋(ESPO)パイプラインの中国国境までの支線建設に関する協定に合意、09年2月、同パイプラインの支線を大慶にまで延長することに合意した。中国は、ESPOプロジェクトに携わっているロスネフチ社とトランスネフチ社に対して、合計250億ドルの融資を提供する。その見返りとして、ロシアから20年間にわたり日量30万バレルの原油供給を受ける。この中ロ間合意のなかで公表されていない重要な点は、中国がロシアから購入することになる原油の価格である。専門家は、1バレル当たり11.40ドルという破格の安値と見積もる。これは、ロシア側の資金不足を利用した中国の交渉上手ぶりを示すが、将来ロシア経済の回復につれて、不満の種となろう。さらにカザフスタン、トルクメニスタンなどの中央アジア諸国のエネルギー資源に対する中国の積極的な攻勢も、ロシア側の懸念を招いている。