2008年5月以降ロシアに現出した、2人の指導者が協力して統治を受けもつ政治体制。ロシア憲法の規定によれば、ロシア政治の最高指導者は大統領。国家元首としてロシアを対外的に代表し、とりわけ外交・軍事を統括し、首相の任命権をもつ。同憲法は、なんびとも大統領職を2期8年以上連続して務めえないと定めているために、08年5月プーチンは大統領ポストからいったん退かざるをえなくなった。その代わりに彼が思いついた苦肉の策がタンデム(二頭または双頭)体制である。タンデムとは、2人乗りの自転車を意味する。プーチンは首相ポストに就くばかりか、大統領の弾劾に必要な下院3分の2の議席数を有する与党「統一ロシア」を通じて、後任大統領を操作しようとする。それだけでもまだ満足できないプーチンは、己の強力なライバルとなりそうな人物(たとえば「シロビキ」の頭領であるイーゴリ・セーチンやセルゲイ・イワノフ)を避け、彼自身に比べ13歳も若く、彼に忠実なメドべージェフを後継大統領に選んだ。11年9月24日、プーチン首相は翌12年3月4日の大統領選に立候補する意思を表明した。ほかに有力候補もいず、同首相がマスメディアを独占していることから、同年5月7日にプーチンが大統領に返り咲くことは確実視される。このようにして、4年間続いたタンデム政権は終焉(しゅうえん)を迎えることになった。