2010年夏の記録的な猛暑による干ばつによってロシアの穀物収穫量が減少したために、プーチン首相が講じた措置。ロシアは世界有数の小麦生産国で、従来国内の食料需要と家畜飼料用を満たした後は、国外(エジプトなど中東諸国)へ輸出してきた。たとえば09年、9700万トンの収穫穀物のうち7000万トンを国内需要、2700万トンを輸出に回していた。ところが10年夏の猛暑・干ばつの被害によって、当初収穫予想の9500万トンが6000万トンにまで落ち込んだ。プーチン首相は国内需要を優先するとともに食料価格の高騰を防止する必要があると判断し、まず10年8月15日から12月31日までの期限付きで小麦、大麦など穀物の輸出を全面的に禁止し、次いで10月22日に同措置を翌11年7月まで延長することにした。この禁輸令は、ロシアの国民生活を優先しようとする政権の態度をアピールする一方で、ロシアが国際的な貿易パートナーを二の次にする国との印象を生み、何事であれ国家が主導的な体制の国ロシアを相手とすることの経済リスクを改めて認識させることになった。