ロシア経済の近代化をスローガンに掲げるメドべージェフ大統領のペット(愛玩)・プロジェクト。同大統領は、モスクワ郊外のスコルコボに、5分野(IT、エネルギー、宇宙、原子力、医薬品)に及ぶハイテク産学共同体を創設することにした。アメリカのシリコン・バレーをモデルにしていることを隠さず、実際同大統領は2010年6月の公式訪米の際も、直接ワシントンD.C.に入らず、カリフォルニア州のシリコン・バレー視察から訪米を開始した。スコルコボITセンター創設の総括責任者には、ロシア・オリガルヒの一人、ビクトル・ヴェクセリベルクを任命、内外からノーベル賞級の科学者を招請するとともに、同センターにはせ参じる内外の学者、実業家に対しては免税その他の優遇措置を講じると約束した。だが、本来創造的で下からのイニシアチブで推進されるべき科学やイノベーション(技術革新)が、果たして上からの音頭取りで成功するか、危ぶむ声が強い。経済近代化のスローガン同様、12年の大統領選挙をにらんだメドべージェフ現大統領の政治的デモンストレーションの一環と冷ややかに見る者も少なくない。