2010年6月に発覚したアメリカにおけるロシア人スパイの逮捕ならびに交換劇。メドべージェフ大統領のアメリカ公式訪問が終了するや否や、アメリカ司法省は、旧ソ連の秘密警察KGB(国家保安委員会)の後継組織の一つ、ロシア対外情報庁(SVR)のスパイとして、10人のロシア人男女を逮捕した。彼らは多くの場合、カップルを装い、長期間アメリカ内に住みついて、マネーロンダリング(資金洗浄)を行ったり、アメリカCIA(中央情報局)の職員への接近を試みたりしていた。冷戦後の今日においても、米ロ、その他がスパイ活動を停止していないどころか、逆に活発化していることは常識である。とはいえ、なぜオバマ大統領が米ロ関係のリセットを唱道している時期をことさら選んで、「小物」とみなしてよいロシアのスパイ団を拘束したのかは、不明だった。ともあれ、米ロ両国とともに、この事件によって両国関係の全体が損なわれることを回避しようとして、彼ら10人と、ロシアが拘留中だった4人の西側スパイとの交換が成立した。アメリカに逮捕されたロシア人スパイのうちの一人、アンナ・チャプマンは、マスコミにより「美人スパイ」として、ロシア送還後もモデルに転身かと騒がれた。