ロシア連邦のカフカス山脈の北側に位置する地域が、チェチェン共和国内の過激派テロリストが逃げ込む格好の土地、その他の理由で不安定化し、タンデム(双頭)政権にとり「最大の火薬庫」と化している。2010年3月29日早朝、モスクワ中心部の2カ所の地下鉄付近で連続爆発事件が発生し、40人の市民が死亡、90人以上が負傷した。自爆した犯人は、チェチェン武装勢力と関係をもつ2人の若い女性だった。イスラム武装勢力のリーダー、ドク・ウマロフが犯行声明を出したが、真偽は定かではない。このモスクワ地下鉄連続爆破テロ事件に引き続いて、北カフカス地方のイングーシ、ダゲスタン、カラチャイ・チェルケスなどで相次いでテロ事件が起きている。一つの理由は、ラムザン・カディロフ(チェチェン共和国大統領)の迫害に耐えかねて、チェチェン過激派が近隣の北カフカス地方へ移ってきていることにある。だが、それに加えて、これらの地域の経済的貧困、失業者の増大、政治的圧制がテロリズムの温床の原因である。タンデム政権はテロリストに対する厳罰に加えて、同地域の経済的、社会的諸問題に取り組む姿勢を表明したが、短期間に効果が上がるとは期待しえない。もし効果が上がらなければ、同地域はモスクワ中央が制御困難な事実上の独立をとげる危険性がある。