2010年5月に明らかとなった、メドベージェフ大統領の親欧米外交路線。「ロシア・ニューズウィーク」(その後廃刊)は、10年5月11日号でメドベージェフ大統領の新しい外交ドクトリンをスクープした。同ドクトリンは、同年2月に同大統領によって承認されたことが判明しているうえに、スクープされたロシア外務省の文書には、セルゲイ・ラブロフ外相の序文が付けられていた。加えて2カ月後の7月12日、メドベージェフ大統領が、ロシアから世界各国へ派遣中の大使などをロシア外務省内に呼び集めて行った訓示は、同ドクトリンの線に沿う内容のものだった。これらの文書や演説の趣旨は、ロシアが経済近代化を推進するためには欧米諸国との協調外交が不可欠となるというものだった。同ドクトリンが今日まで公式発表されていない理由は、ロシア経済近代化がとくに必要とする先進的な科学技術を提供しえぬ国々(中国、ベネズエラ、イランなど)が反発することを恐れるからだと解釈されている。同時に日本についての言及が少ないのは、もし日本にそのような協力を要請するならば、日本政府が必ずや北方領土交渉においてロシア側の譲歩を要求するに違いないことを危惧(きぐ)するからであろう。