主として政権与党「統一ロシア」をてこ入れして、来るべき二つの選挙を有利に運ぼうとしてプーチン首相が提案した構想。プーチンが党首を務める「統一ロシア」は、2007年の下院選挙で圧勝した後、支持率を低下させはじめた。かつてのソ連共産党に類似した強力な地位にあぐらをかき、おごり高ぶる傾向を示しはじめたからだった。これでは、11年12月4日の下院選挙、翌12年3月4日の大統領選挙での圧勝は必ずしも保証されえない。こう懸念したプーチンは、11年5月6日に、「全ロシア国民戦線」という名前の組織を創設することを突如提案した。同組織には、「統一ロシア」に加えて、その他の諸政党、企業、労働組合、女性、青年、在郷軍人などの参加が期待され、要請された。同戦線には100以上のNGOその他がすでに参加を表明し、参加者の合計は数百万人にも達するといわれる。だが、プーチン首相の呼びかけを断るわけにもいかず、形だけ加盟することにした組織や人間も多く、また同戦線と「統一ロシア」との関係も定かでなかった。同戦線の結成がはたしてどの程度プーチンの意図に役立ったかは、疑問とされる。