ウクライナの前首相ユリア・ティモシェンコ(50歳)が職権乱用罪で有罪判決を受けた事件。政争が絡んでいるのではないかとうわさされる。ティモシェンコは、2004年、ビクトル・ユシチェンコ(ユーシェンコ)と共にウクライナの「オレンジ革命」の立役者となった人物。親ロ派のビクトル・ヤヌコビッチ「地域党」党首を打倒し、親欧米政権を樹立後は、ユシチェンコ大統領下、首相に就任した。09年1月ロシアは、ウクライナ向けの天然ガス価格の値上げ交渉がデッドロックに乗り上げたために、ガス供給を停止した。ティモシェンコは西欧並みに近い価格でロシアからガスを輸入することに同意した。ウクライナの検察当局は、同契約締結によってティモシェンコ首相がウクライナに甚大な経済的損害を与えたと主張した。11年10月、首都キエフの地区裁判所は、この検察側の主張をほぼ全面的に認め、元首相に禁錮7年の実刑判決と服役後3年間の公職停止を言い渡した。ウクライナでは10年1月以来ヤヌコビッチが政権に返り咲いて大統領に復帰する一方、ティモシェンコもユシチェンコ同様、野党政治家の地位を占めているに過ぎない。そのために、11年10月の判決は、ヤヌコビッチ政権が翌12年の国会議員選挙を視野に入れて反対勢力の排除を狙ったキャンペーンの一環とみなす見方もある。09年にロシア-ウクライナ間のガス価格交渉を指揮したのはプーチン首相(当時)にほかならない。そのこともあって、同首相は、キエフ地区裁判所の判決を耳にしたとき「理解できない」と不快感を表明した。