ロシアは1993年、世界貿易機関(WTO)の前身の関税貿易一般協定(GATT)の時代から、加盟申請、交渉を重ねてきた。加盟交渉が長期化していた背景として、銀行部門へのアクセス、知的財産権、輸入税、農業支援などのロシア国内の制度に問題があるとして特にアメリカが難色を示していた点を挙げることができる。また、旧ソ連諸国でロシアに先駆けて加盟を果たした国々のうち、エネルギー供給問題などで衝突していたウクライナや、2008年に軍事衝突に至ったグルジア(現・ジョージア)がロシアの加盟に消極的であった。09年6月、業を煮やしたプーチン首相がベラルーシ、カザフスタンと結成する関税同盟によるWTO加盟申請の方針を示したが、同年秋までにはこれを撤回。また、アブハジアと南オセチア国境における物資モニタリング問題について、ロシアとグルジアを仲介したスイスによる妥協案を受け入れ、11年12月WTO閣僚会合でロシアの加盟に関する議定書が調印され、加盟が承認された(同議定書は12年8月22日に発効、これをもってロシアは正式加盟国となった)。加盟にともない、ロシアは規定に従い最長8年をかけて関税率の引き下げを実施することになる。また、ロシアが独自に編成した関税同盟の諸制度との調整が必要となる。