軍改革・近代化で辣腕(らつわん)をふるってきたとされるプーチン側近の解任を機に表面化した、一連の大規模汚職事件と人事交代。2012年秋、国防省の持ち株会社での汚職疑惑捜査を進めるに当たり、プーチン大統領は「客観的捜査のため」アナトリー・セルジュコフ国防相を解任(11月6日)。後任にはショイグ・モスクワ州知事(前非常事態相)が就任した。疑惑の対象となっている会社「オボロン・セルビス」は08~11年までセルジュコフが兼任で代表取締役をつとめた。また、同社の資産管理担当の女性取締役が当局により身柄を拘束された後、自宅拘禁に。同取締役はセルジュコフの愛人との報道もある。セルジュコフ自身が連邦捜査委員会に複数回出頭し、複数の国防省高官も逮捕されるなど13年1月現在捜査は継続中。また、事件とは直接関係ないとされるものの、国防相解任に伴い参謀総長(第一次官兼任)をはじめ国防省主要幹部も交代した。政府高官による汚職の取り締まりはプーチン政権の威信回復のためにも重要課題であり、引き続き捜査の展開が注目される。また、今回の事件は、人員・経費の削減を進めてきたセルジュコフに対する反発によって起こったとの指摘もあり、今後のロシアにおける政官関係のあり方を考えるうえでも注目すべき事件である。13年11月1日、セルジュコフは国営公社「ロステクノロジー」組織下の研究・試験センター所長に就任し、復権の兆候も。その一方で、同月28日に連邦捜査委員会による同氏に対する捜査も始まった。