ここでは、2011年以降に発生したシリア内戦をロシアの立場からみる。バッシャール・アサド政権に反対する諸勢力の武力闘争が激化し、シリアでは内戦状況が深刻化した。ロシアは内戦当初より、国際法に基づく平和的解決を主張し、事実上、アサド政権側を支持。13年夏、シリア国内での民間人に対する化学兵器の使用疑惑が浮上し、アメリカによる軍事介入の可能性が高まったことに対しロシアは牽制(けんせい)。国際交渉により武力攻撃を回避させるとともに、化学兵器禁止機関(OPCW)を通じたシリアからの化学兵器排除について合意をとりつけた。化学兵器の国外搬出・廃棄の際、ロシアは200万米ドルの廃棄費用に加え(13年12月報道時点)、運搬のための人員・軍用車両・水槽などの物品を提供するなど、14年6月末までの完全廃棄に向け積極的な関与を進めている。その一方で、軍事供与の拡大などアサド政権への支援も継続しているものとみられる。14年1月より、スイスで反アサド勢力を含めた和平交渉が開始されたものの、当初ロシアが目指していた親シリアの地域大国・イランの参加は結局見送られた。