ウクライナ国内唯一の自治共和国。ロシア系住民が多数を占め、ロシアとの係争地となっている。黒海北岸のクリミア半島は、13世紀前半のモンゴル帝国侵入によってキプチャク・ハン国領となり、同国の解体後の15世紀にはクリミア・ハン国が成立。最盛期、同国は黒海北部一帯からボルガ川流域まで版図を広げ、1475年以降オスマン帝国の保護国となりながらもロシアと対峙した。支配民族であったクリミア・タタール人は、1783年にハン国がロシアに併合されると帝国内では非正教徒という少数派に転じる。第二次世界大戦中の1944年5月には、ナチス・ドイツに協力したかどで中央アジアに強制移住させられた。54年、クリミアはウクライナに帰属替え。ゴルバチョフ政権の改革がすすむなか、クリミア・タタール人の帰還も次第に進んだ。91年末のソ連解体後、クリミアの帰属をめぐってロシアとウクライナが対立。最大の争点であった半島南部の軍港セバストポリを拠点とする黒海艦隊の処遇は、97年の国家間協定により、ロシアが基地使用料を支払って艦隊を維持することで決着。90年代末までには、ロシア系住民のウクライナからの分離・独立の機運も次第に収束した。しかし2014年2月、ヤヌコーヴィチ(ヤヌコビッチ)大統領の国外逃亡による政治的混乱を機に、親ロシア派勢力が自治共和国の実権を掌握。ロシア軍による事実上の介入が進むなか独立宣言を行い、3月16日にはロシアへの編入を問う住民投票を実施、当局側発表で96%超の賛成票を得た。ロシアは即座にクリミアの独立を承認し、プーチン大統領はクリミアの執行府・議会代表との間でロシア編入に関する条約を調印した(3月18日)。欧米や日本は住民投票が無効であり、クリミアのロシアへの併合はウクライナの主権や領土保全を侵すものとして非難している。