陸上では主としてロシア・アゼルバイジャン・イランを、さらに海上航路によってイランからインドへとつながる輸送ルートを整備する構想。従来のヨーロッパ・インド間の主要輸送ルートとされてきたバルト海からウアスン海峡やドーバー海峡を抜けて地中海・紅海へと続く海上航路に比べ、距離を短縮でき、輸送コストの低下につながる利点がある。また、上記の国以外のコーカサス諸国や中央アジアなど、ユーラシア西部の新興諸国を巻き込む形で関連ルートが整備される予定で、これらの国々の経済発展にもつながる構想として注目されている。21世紀初頭よりロシア・イラン・インドの3カ国が主導して構想が立てられてきた。とりわけ、イラン南部・オマーン湾に面するチャー・バハール港の整備は、回廊構築の重要事業として、インドが積極的に乗り出している。インドにとっては、NTSCの整備は、軍事衝突の火種を抱える隣国パキスタンを経由することなく、資源の豊富な中央アジア・コーカサス諸国とつながることのできる輸送ルートが確立することを意味する。また、ロシアにとっては、イランやインドと物流における基盤強化を進めることで、これらの国々との政治的連携をさらに強める意図があると考えられる。