旧ソビエト連邦(ソ連)の共和国・モルドバはルーマニアとウクライナに挟まれ、ソ連解体以降は、親米欧系と親ロシア系の政権が交互に成立し、また選挙制度も相次いで変更されてきた。2016年、大統領選挙は20年ぶりに国民による直接選挙へ変更された。新制度での選挙は10月30日に実施され、立候補した9人はいずれも過半数の得票数を得られなかったため、11月13日に上位2者による決選投票が実施された。その結果、親米欧派候補を抑えて親ロシア派の社会党党首イーゴリ・ドドンが当選した(得票率52%)。ドドンは、欧州連合(EU)との自由貿易協定(FTA)見直しを主張し、隣国ウクライナで発生したロシアによるクリミア併合にも好意的な発言を行っている。他方、議会や首相は親米欧派であるという「ねじれ現象」が続いている(17年2月現在)。ウクライナでの紛争が長期化し、米欧とロシアとの深刻な対立にある中、モルドバ内政も困難な局面が続くことが予想される。