カリーニングラードは、「EU(欧州連合)に包摂(ほうせつ)されたロシア」、「ロシアのEU内の飛び地」である。この地の境界線をめぐっては、人・ものの移動に関する、鉄道・道路輸送、ビザの問題、核配備疑惑やNBC兵器(核・生物・化学兵器)のEUへの流入の問題など、EU境界線をめぐる最大の懸念事項の一つである。ロシア人がEU領土を通って自国に移動するというビザ・トランジット問題については、2003年11月、プーチン大統領とプロディ欧州委員会委員長(ともに当時)とのトップ会談において、「簡易トランジット書類」の導入により移動を簡素化することに成功した。ロシアはさらにノンストップの鉄道輸送、バルト海の軍艦航行の自由などを求めたが、これらは受け入れられなかった。しかし07年末に、ポーランド、バルト3国がシェンゲン協定(域内移動の自由)に加盟することにより、新たな段階に移行している。これまでEUにマルチビザで自由に移動することができたカリーニングラードの市民は、ビザ料金や、招待ビザの困難性から、問題を抱えることとなる。こうした問題もあり、ロシアは現在、EUとの間に、相互ビザの廃止を検討している。