2008年2月17日、セルビアの強い反対の中で、コソボがセルビアから独立した。同年1月に行われた総選挙で、首相にはコソボ民主党のハシム・サチ、大統領にはコソボ民主同盟のファトゥミル・セイディウが選出されていた。コソボの独立を最初に承認した国は、アメリカ、イギリス、フランス、トルコ、アルバニアの5カ国で、これらが独立の立役者であった。ついでイタリア、オーストラリア、さらにドイツも承認した。他方で、セルビアの強い反対に加え、キプロス、ルーマニア、スロバキア、スペインが独立に反対、さらにロシアと中国も、独立に対し強い懸念を示した。反対した国々は、国内に多かれ少なかれマイノリティーを抱えており、国内民族運動への影響を懸念したといえる。
EU(欧州連合)の外相理事会では、コソボ独立に関しては各国の独自の判断の下に承認するようにとのことで、EUとして歩をそろえることは要請されなかった。アメリカはEU議長国スロベニアにコソボの第1承認国となることを要請したが、スロベニアは、主権尊重の観点から、それは他国からの要請事項ではないとして退けた。国連は相互の話し合いによる「共同の合意」の下での独立の承認を要請したが、セルビア側は、現在に至るまでコソボの独立を容認する姿勢はなく、むしろ「ヘルシンキ条約」に基づく領土保全の原則と国際法に違反しているとして、国際司法裁判所に提訴している。08年12月末の段階でもコソボ独立の承認国は、国連の約200に及ぶ国家のうち、4分の1強の54カ国に過ぎず、マイノリティーの国民国家形成への警戒と共に、武力や大国の影響下での独立に対する懸念も見られる。国連の安全保障理事会ではロシア・中国の反対のため、国連の正式承認が行われない可能性も高い。