ウクライナ政府が2013年11月21日、欧州連合(EU)加盟の第一歩となる「連合協定」への署名先送りを決めたこと。この協定は自由貿易協定(FTA)を含む包括的な関係強化を定めたもので、同月末の「EU東方パートナーシップ首脳会議」で署名する予定だった。連合協定は将来のEU加盟に道を開くもので、これに反対するロシアは自国とカザフスタン、ベラルーシが加盟する「関税同盟」に加わるよう説得していた。親ロシア派のヤヌコビッチ大統領は、このままEUに加盟すれば経済の悪化を招き、国民の支持を失いかねないと先送りを決断した。これに抗議して親欧米派の野党は反政府デモを組織、首都キエフの独立広場などを占拠した。このため、デモを規制しようとする治安当局とデモ隊との武力衝突が多発、多数の死傷者が出た。政権側は野党側と協議し、14年2月21日、大統領選の前倒しや憲法改正でいったん合意した。ところが、デモ隊は合意に従わず、大統領府などを占拠。さらに、野党主導の国会が大統領の解任を決議したため、大統領はロシアに脱出し、ヤヌコビッチ政権は崩壊した。政権を掌握した旧野党は同27日、デモ参加者ら民間人を閣僚に登用して新内閣を発足させた。これに対し、ロシア系住民が多いウクライナ南部のクリミア自治共和国はロシアへの編入を求め、住民投票の実施を決めた。新政権を認めないロシアのプーチン大統領は、同国上院にウクライナへの軍事介入を提案。承認されると、ロシア系住民の保護を理由にクリミア半島に軍部隊を派遣、事実上占領した。一方、新政権を支持する欧米諸国は、ウクライナの主権と領土を侵害しているとして、ロシアに対し制裁措置を発動、ロシアと西側が対立する「新冷戦」状態に発展しかけている。