2015年3月31日、ボスニア・ヘルツェゴビナの下院に当たる代議院は、ボシュニャク系(ムスリム)のデニス・ズビズディッチを閣僚評議会議長とする、閣僚評議会(内閣)を承認した。同国は、旧ユーゴスラビア連邦の構成共和国の一つで、1992年4月以来、独立を巡って主要3民族(ボシュニャク系、クロアチア系、セルビア系)の間で激しい戦闘が起き、難民・避難民200万人、虐殺や民族浄化なども横行する第二次世界大戦後のヨーロッパ最悪の紛争となったが、95年12月のデイトン和平合意により、およそ4年近くに及んだ民族紛争が終結。ボシュニャク系とクロアチア系を主体とするボスニア・ヘルツェゴビナ連邦と、セルビア系を主体とするスルプスカ共和国の2構成体(エンティティー)による連邦国家として国内情勢を安定化させていった。同国の政権は、3民族がそれぞれ選出する大統領評議会メンバーが8カ月ごとに輪番で大統領評議会議長(国家元首)を務め、政権運営は代議院の承認を受けた閣僚評議会議長(首相に相当)が行う。2014年10月12日の国政選挙で、各構成体の議員と代議院議員、及び大統領評議会メンバーが選出され、その後、ボシュニャク系を中心とする各民族の主要政党間でおよそ半年に及ぶ連立交渉が進んで、ようやく新政権が発足。3民族共通の目標であるEU(欧州連合)並びにNATO(北大西洋条約機構)加盟に向かって、諸改革を進めることとなった。