ポスト冷戦期に約10年継続したトニー・ブレアを首班とするイギリス労働党政権。労働党は1994年7月にブレアを後継党首として選出し、極左派を排除、労働組合の強固な影響力を削ぐなどの改革を行い、97年5月、それまで18年間続いた保守党から政権を奪い取った。以後、サッチャーが推進したネオリベラリズムでも、オールドレーバーの固執する国家介入主義でもない「第三の道」、すなわち、市場原理と社会的公正の両立を目指してきた。小さな政府を維持しながらも、教育を通して機会均等を確保、地方分権・地域コミュニティーの活性化を通して弱者復活を図るという政策である。この結果、好調な経済を背景に、2005年5月の総選挙では労働党初の3選を達成した。だが、外交面では、イラク戦争で対米追随に走ったことへの風当たりが強かった。イギリスはテロの標的となり、テロ対策強化のため、国内は監視社会さながらの状況になってしまった。また、公約だったユーロ参加の国民投票は、経済条件が整わず、先送りせざるを得なかった。しかし、欧州独自部隊創設に踏み込み、欧州統合の深化に貢献したといえる。