北アイルランドのカトリック系住民の独立と地位向上をめぐる紛争。アイルランド共和国は1921年にイギリスから独立したが、この時プロテスタント系住民の多いアルスター(Ulster)と呼ばれる北部6州は、イギリス統治下に残された。同地域ではプロテスタント系住民とカトリック系住民の間に政治・経済的な格差が大きく、権利が抑圧されていると感じたカトリック系住民は独立要求運動を展開した。事態の行き詰まりを背景に69年以来、カトリック系過激派組織アイルランド共和軍(IRA Irish Republican Army)とイギリス残留を主張するプロテスタント系過激派の間にテロの応酬が続いてきた。98年4月10日、ようやく当事者間に和平合意(Belfast AgreementあるいはGood Friday Agreement)が成立した。これは、北アイルランドの自治権を拡大し、一方で、観光といった特定分野で同地域とアイルランドとの提携を進める、という画期的な内容である。しかし、その後もIRAの武装解除をめぐって、事態は膠着(こうちゃく)し、自治政府が凍結された時期(2002年10月から07年5月)もあったが、05年7月、IRAは最終的に武装放棄を発表している。