フレキシキュリティーとは、雇用主にとってのフレキシビリティー(flexibility 柔軟性)と、労働者にとってのセキュリティー(security 保障)をつなげたもので、デンマークの労働市場モデルを示した造語。フレキシビリティーは企業が労働者を採用、解雇する上で、英米なみにほとんど規制を受けない自由度のことを示す。他方、セキュリティーは解雇された労働者に対する手厚い再就職支援の仕組みのことを示している。デンマークは景気拡大期に、このシステムによって、労働力の流動性を確保し、革新分野に人材を集めやすくして、高い競争力を確保すると同時に、失業率を低下させることに成功した。しかし、2008年の世界的な金融危機後、フレキシキュリティーのバランスは崩れはじめた。フレキシビリティーはより積極的に適用される一方、財政事情からセキュリティーの方が追いつかない状況が出現したからである。こうしたなか、移民、特にイスラム系の移民を敵視する極右政党である国民党が勢力を伸ばしている。