NATO(北大西洋条約機構)の今後10年間の国際状況分析、脅威認識、戦略方針を定めた文書。2010年11月のリスボン首脳会議で採択された。今回が冷戦終焉(えん)後3度目の策定であり、11年ぶりの改訂となる。NATOの中心的な任務として、集団防衛、危機管理に加え、協調的安全保障を加えた3つと規定した。集団防衛とは対外脅威からの領土防衛であり、危機管理とは同盟国に影響を与える地域紛争の予防、収拾、紛争後の安定化を指す。これに対して協調的安全保障とは、パートナー国や国際組織との軍備管理・不拡散協力などを通して、同盟国の国境を越えた国際的な安全の強化に取り組むことを意味している。戦力としては戦術核兵器の維持が確認されると同時に、集団防衛の中核要素としてミサイル防衛(MD)を位置付けた点が新しい。また、ロシアとの協力が戦略的重要性を持ち、NATOとロシアの安全は相互にからみ合っているとして、MD分野をはじめ、両者の協力関係強化がうたわれている。対ロ和解への転換の背景には、イラク、アフガニスタンでの安定化の失敗や、各国の財政難という経済的要因があるものと考えられる。