2010年10月、キャメロン首相率いる保守党・自民党の連立政権によって初めて公表された、イギリスの新防衛戦略の見直し。1990年代末に出されたブレア政権(当時)の「防衛戦略見直し」では人道的介入の必要性を認識し、積極的に軍を国外展開させる能力の確保に主眼が置かれていた。それに対して、新戦略はイラク、アフガニスタン介入の教訓と大幅な財政赤字をもとに、国防費を削減し、対外軍事介入の縮小が目指されている。少ない予算の中、軍事力だけではなく政治外交力も含めた総合的な防衛・安全保障政策を目指すというものだ。他方、核戦力に関しては、弾頭数を180発、うち実戦配備は120発とし、しかもそれはバンガード級原子力潜水艦4隻にのみ配備するという2006年の決定を踏襲している。すなわち残存性を重視した最小限抑止を目指すものである。さらに、10年11月初め、イギリスはもう一つのヨーロッパの核保有国フランスと、核兵器の安全性確保や核テロリズム対策での協力を深める条約を調印した。これによって両国は核弾頭の実験施設を共同運営することになった。この背景にも予算の圧縮、その効率的使用の思惑がある。