北大西洋条約機構(NATO)とロシアの間のミサイル防衛(MD)を巡る協力協議。2010年11月のNATOリスボン首脳会議で協力深化の可能性を検討することが合意された。当初、ロシア側は、防衛エリアを双方で分担するセクター主義を主張した。NATOのMD使用の決定にロシアも関与したい、という意図である。こうしたことは受け入れられないNATO側は、ロシアの懸念を緩和するために、現実的な3つの提案をしてきた。第1はNATO・ロシア評議会の場での意見交換を通してMD計画の透明性を図る。第2は12年に合同の戦域MD演習を行う。第3はデータ共有や計画支援のための合同MDセンターを設置する、である。これに不満なロシア側は、さらにNATOのMDがロシアの脅威とならないという法的補償を求めてきた。しかし、これもまた拒否されたため、ロシアは態度を硬化させた。11年11月、メドベージェフ大統領は、もしNATOのMDが配備されれば、対抗措置として、新START条約からの脱退や、カリーニングラードへの核配備可能な短射程ミサイル、イスカンデルの配備も辞さないと述べ、協議は膠着(こうちゃく)状態に陥っている。