ドイツのシュレーダー首相(当時)は1999年12月に、第二次世界大戦中のナチス統治下で強制労働に従事させられたユダヤ人やポーランド、チェコスロバキア、ウクライナ、ロシアなどの労働者や捕虜に対して連邦政府と州政府、関係企業が総額100億マルクの補償基金を創設することを正式に表明、2000年7月には基金財団「記憶・責任・未来」が発足した。この問題は、アメリカ在住のユダヤ人からドイツ企業を相手に提訴されていた補償請求訴訟に対応する形で連邦政府、州政府、企業、ユダヤ人団体などとの間で折衝されていた基金創設で、最終合意に達したもの。これには、連邦政府と州政府が50億マルク、関係企業約200社のうち約60社が50億マルクを拠出することになったが、補償対象者の決定や補償額の算定基準、支給額と支給方法、基金運営の具体的方法の決定までには越えなければならない要素を抱えた。とくに企業側の消極姿勢が際立ち、予想される新たな損害賠償請求に対処するための明確な法的根拠がないことを理由に基金への拠出に踏み切れない企業が続出した。しかしアメリカで係争中の集団訴訟がすべて却下されたのを受け、01年6月には下院が支払いを承認、6月15日からポーランド、チェコ、アメリカのユダヤ人団体に補償金支払いが開始された。