2010年、ポルトガルのリスボンで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議で決定された、戦域ミサイル防衛配備計画。06年から、NATOは欧州部隊防護のために、各国の迎撃機などからなる合同システム(ALTBMD)の構築を始めていた。そこに、07年以降、アメリカのブッシュ政権が欧州配備のミサイル防衛計画を推進し始めた。これは予想されるイランの長射程ミサイルから欧州配備のアメリカ軍部隊を防衛するもので、チェコにレーダー、ポーランドに迎撃機が配備されることになっていた。しかし、これがロシアの強い反発を生んだことから、09年9月にオバマ政権がこの計画を廃棄し、代わるものとして発表したものが段階的適応アプローチ(Phased Adaptive Approach ; PAA)である。現存の脅威である、イランの保有する短射程、中射程弾道ミサイル戦力から、欧州加盟国の国民を守るものとして、多数の短射程海上配備のSM-3ミサイルを欧州の周りに、SM-3大隊を地上に配備する(ルーマニアとポーランド)計画である。リスボン会議では、このPAAを新しいNATOミサイル防衛構想の主要部分とし、ALTBMDに連結させることを決定した。NATOは全体の指揮統制を行う。12年5月のシカゴ首脳会議では初期能力の稼働開始が宣言されている。